言い訳

私は今、複雑な心理に囚われている。

ひとつは後悔。ひとつは高揚感。ひとつは脱力感。

いずれも、どうにも真に心を表すことは出来ていないと感じる。

何故こんなことになったのか、ときっと君たちは聞きたいだろうから言い訳を少し綴りたいと思う。

 

きっかけはふとした瞬間だった。

例えば会社帰りの電車の車内で窓の外の夕焼けであるとか、休日のショッピングモールの騒音であるとか、会社でスケジュール帳を確認する時だとか。

そんな些細な時間に立ち顕れる孤独だった。

学生時代は早く働きたいとよく思ったものだが、いざ地元を出て都市部で働いてから気づいた。何にもならない日常にだ。

宗教勧誘のチラシやインチキ臭い科学商品をじっと見てしまう程度に疲れていた。

 

彼女を知ったのは朝、ゴミ出しする時に偶然会ったからだった。隣に住んではいるけれど引っ越して挨拶に行ったっきり、顔も忘れかかっていた頃だった。目が合っておはようございます、とだけ会話しただけだったがマンネリ化した生活に刺激を与えるには十分だった。間違いなくこの時の私は何かの変化を感じ取っていた。

 

そして今に至る。実に疾走感溢れる楽しい時間であった。準備をしていた訳では無いし、そんな気なんて手が動く瞬間までなかった。ただ手を伸ばせば彼女に触れられる状況は神の思し召しだとしか思えなかった。彼女は私の膝に頭を乗せて寝ている。横顔がとても美しい。エアコンの風が心地よい。達成感は確かにある。孤独は小さくなり心が満たされていく。手は彼女の温もりを思い出させる。彼女の顔をもう一度見る。やはり美しい。彼女をお姫様抱っこしてベットに運ぶ。見た目よりずっと重たい。添い寝しながら考える。2人の安らかな時間をどうやって守ろうかと。

 

きっとこの文章を読むのは私達を追いかけて来た方だろう。予め言っておく。ここに書いてあったことは真っ赤な嘘だ。後悔も何も無い。だから最後に伝えよう。

 

捕まえたければ捕まえてみろ。