2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

星つなぎ

僕の趣味は天体観測。 深い闇に浮かぶ星々を繋ぐと1つの絵になるのは自然の神秘としか言いようがない。 その様子はとても感動的で日々の疲れをすっかり忘れさせてくれる。 1つ1つの星は詳しくは知らない。 せいぜい有名な星の名前と等級が分かるくらいだ。 …

分身解放

朝、7時。 気怠げな目覚ましを止める。 「あぁ………ねみぃ…」 「おい、いつまで寝てるつもりだ。さっさと起きろ!」 ベッドの横でメガネをかけた男が言う。 「うるさいな……眠いんだよ…」 声にならない言葉を呟くと 「昨日の朝は遅刻ギリギリで冷や汗かいてた癖…

遠く、山並みの向こうで太陽が沈んでいる。 夕日の光は空を、街を赤く染める。 こんな薄汚れて、人々が出した不幸と鬱憤の詰まった街でさえ、美しく錯覚させる。 いつかあの太陽は大きく膨らんで地球を焦がしてしまうらしい。 そうなったら、この街も全て灰…

夢の市

気がつくと、私は広く白い世界にいた。 見渡す限りなにもなく、私1人。 地面の硬さや空気の温度も感じられない世界。 ここにいてもしょうがないと思い、歩き始める。 歩き始めても、どこか身体がフワフワしているような感覚で筋肉が伸び縮みする訳でもなく進…

灰色の影(2)

目的地はとある建物の地下だった。 建物に入るとお香のような匂いがする。客を否応なく落ち着かせる罠だと思った。 地下へはエレベーターを使って行く。以前はエスカレーターもあったが今では地上階のみで使われており地下へ向かうものは封鎖されていた。 エ…

灰色の影(1)

腹がへった。長らく何も食ってない気がする。 通りを黙りこくって歩きながらそんなことを考えていた。 ここはN小路通り。かつてこの街が都と呼ばれた頃からある由緒ある市場だった。幼い頃は母に連れられ、おせちの買い出しによく来ていた。人々が溢れ師走の…